なぜドキュメンタリー映画なのか?
アジアン・ドキュメンタリーズの伴野社長は、日本ではドキュメンタリー映画を観る文化が育っていない、と言います。最近はコスパ重視の短くて展開の早い動画ばかりが溢れています。これらの動画は、見る人に考える暇を与えずに次々と見続けてもらえるように作られています。こういう動画に慣れてしまうと、映像を見て考えることが出来なくなってしまうのではないか。伴野さんは、この危機感からドキュメンタリー映画に触れる機会を増やそうとしています。
私もこれまでに何度も様々なドキュメンタリー映画の上映会やワークショップをやってきて、ドキュメンタリーという映像の力を感じています。
ドキュメンタリー映画は、世界で実際に起きていること、実際に生きている人が挑戦していることをドキュメンタリー作家が切り取った映像です。劇映画のように空想の話ではありません。映画から感じたことを実際に体験している人が存在するのです。映画に登場する人たちには、その前後のストーリーもあるのです。
この人は今はどうしているのだろうか? あの人たちはなぜこんな活動をしているのだろうか? なぜこんな酷いことが起きてしまうのだろうか?
ドキュメンタリー映画は世界中のリアルストーリーの一部です。
描かれている人たちの気持ちや、その周りの環境を感じることで、90分程度の時間で自分の知らない世界に少し近づいた感覚になります。
SANDO Cinemaでは、アジアン・ドキュメンタリーズさんの配信している様々なドキュメンタリー映画から、毎月1作品を選んで鑑賞会を開催しています。
これまでに鑑賞した映画は、それぞれなんらかの社会課題をテーマにしたものです。
自閉症の天才音楽家とその家族の葛藤を捉えたドキュメンタリー。音楽家としては天才と称されるが一人で生きていくことが出来ない兄を支える母、家庭に居場所を失う弟の姿を追い続けた映画。
18歳でビニール袋廃止運動に取り組むメラティが世界で同じように社会課題に立ち向かう同世代を訪ねるドキュメンタリー。自分たちの未来に関わる社会課題の解決に本気で挑戦する若者たちの想いが描かれる。
タイで3000羽のカモを笛一つで操る米農家ソムヌックさん。無農薬栽培にユニークな方法で挑戦する姿を追う。3000羽のカモが一列に並んで行進する姿は子どもでも楽しめるドキュメンタリー映画。
大量のデジタルテキストに溢れた現代に東洋・西洋の書家12人の目を通して手書き文字の芸術としての在り方を問う。書の美しさは、表現する書家の魂の軌跡。書家の生き様と作品を味わうドキュメンタリー映画。
毎回20名までの参加者で一緒に映画を鑑賞しています。映画鑑賞後には、映画のテーマと関連したゲストにお話をしていただいたり、参加者同士で感想を話し合ったりしています。
ドキュメンタリー映画の良さは、観る人それぞれが感じることが異なること。同じ映画を観た人同士で対話することで、一人で観るだけでは得られない視野の広がりが感じられます。
『ノクターン』ではプロのオルガニストに参加していただき、音楽家の目から見た映画の感想をお話いただきました。『私たちより大きなもの』では、日本でアフリカの学校を支援している大学生に活動の紹介をしていただきました。
毎回参加してくださるシニアな方、友達と一緒に参加した小学生、テーマに興味を持って参加してくださる方など、年代も立場も超えた様々な人が一緒に映画を観て感想を共有します。『ダック・アカデミー』では、カモが可愛かった~という小学生の感想があったり、『魂の軌跡』では、映画に登場する書家のファンであるという書道教室の先生が、その人のすごさを語ってくれたり。
参加者のそれぞれが何かしらの気付きや学びを得ているのではないかと感じています。
次回は「教育改革 ーTHE SCHOOL IN THE CLOUDー」を鑑賞します。
この映画は、インドで始まった教育改革を追いかけたドキュメンタリーです。日本ではGIGAスクール構想によって一人一台のICT端末配布が実現しています。では、インターネットとコンピューターを使ってどのような学びが展開されているのでしょうか?
子どもたちが主体的にどんどん勝手に学んでいく姿を作ることに挑戦してきたスガタ・ミトラ博士の取り組みから、何か新しい気付きが得られるのではないかと思います。
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