WIRED主催「Singularity ビジネスカンファレンス」に参加しました。
WIREDは、1993年にアメリカで創刊したテックメディアです。30年以上にわたり、最新のテクノロジーが社会・文化・経済に与える影響に焦点をあてて雑誌とオンラインで発信してきたメディアです。そのWIREDが人工知能AIにフォーカスしたカンファレンスを開催するというので、ワクワクしながら参加してきました。
キーノートスピーチは、なんとレイ・カーツワイル氏!
2005年に "The Singularity is Near" という著書を出版し、2045年にAIが人類の知能を超えるシンギュラリティに達すると予測した人物です。カーツワイル氏が提唱してから約20年。この間に彼の予測のいくつかは実現されているのです。
そして、2023年は生成AI元年と呼ばれ、chatGPTを始めとした生成AI技術が一気に普及し、多くの人がAIの実力に驚愕しました。
カーツワイル氏は、最近の進化を見て "The Singularity is Nearer" を出版しました。シンギュラリティはより近づいているということです。カーツワイル氏のスピーチはこのイベントのために録画されたビデオでしたが、その中で2020年代のうちに汎用AI(AGI)が登場し、シンギュラリティが訪れると発言しました。
さらに彼が言うシンギュラリティは、ナノロボットが進化し、脳に埋め込まれたナノロボットを介してクラウドと接続し、人々が入出力デバイスを使わずに大量の知識を得ることができる、人間とAIが融合する世界だと言います。
すでに変化は始まっていますが、人間にとって重要なのは知識やスキルから、創造力や適応力に代わっていくとのこと。このような未来において、人間は「夢中になれること、情熱を注げることを大切にしてほしい」というのが彼のメッセージでした。
カンファレンスでは、4つのセッションが用意されていました。
○セッション1 AI Accelerates Digital Twins
○セッション2 AI Company Vision 2045
○セッション3 Who Leads the AI Transformation?
○セッション4 Humans Flourish and AI Ethics
どのセッションも素晴らしいゲストによる学び多い対談でした。
特にセッション4では、スペシャルゲストとして「ホモデウス」著者のユヴァル・ノア・ハラリ氏がビデオ登壇しました。
ハラリ氏は「サピエンス全史」「ホモデウス」「21Lessons」のベストセラー3作品を出版した世界的な歴史研究家です。「サピエンス全史」では、人類の歴史を相談なスケールで紐解き、「ホモデウス」ではこれから起きる未来のディストピアを超人類ホモデウスとして示しました。
ハラリ氏が今の生成AIの進化に対してどんな話をするのか、とても興味深く聞くことが出来ました。ハラリ氏が生成AIの進化を受けて今年書き上げた "NEXUS" の内容がベースになっています。
ハラリ氏は、技術の開発を行う際に常に「人間はどのような存在か?」を問うことから始めるべきだ、と言います。
これまでに発明された技術は、発明時点では想定されなかった使われ方をしてきたことを5000年前の文字の発明から、Youtubeの発明の例を使って解説してくれました。
人間は受動的な消費者だとみなせば、数百万におよぶ動画制作を行うことは不可能であり、そんな大量の動画を再生できるプラットフォームを作っても意味がない、とYoutubeが発明された時点でテック大企業は見向きもしなかった。しかし、実際には人間は能動的な創造者として、自分たちでたくさんの動画を作り始めたのです。
ハラリ氏のメッセージは「受動的な消費者になるのではなく、能動的な創造者であれ」でした。
前職で研究開発に長年従事し、AIやロボットも含めた様々な技術の進化を見てきました。私が技術の最先端にいたのは6年以上前ですが、その時点ですでに今の技術進化の流れは始まっていました。カーツワイル氏が示した未来は、当初のシンギュラリティのイメージを超えたものでしたが、10年,20年というスパンで考えれば十分実現可能なものだと感じます。
今回のWIRED Singularityのテーマは「未来はAIによってもらたされるのではなく、わたしたちがつくりだすものだ」。
これはまさに、私が教育に関わる目的です。
すべての子どもたちにとって、未来は自分たちが生きる世界です。その世界は自らが創り出していってほしい、と思い、教育の変革に取り組んでいます。
今回、カーツワイル氏が示したシンギュラリティの予測、ハラリ氏が示した人間の在り方は、これからの教育のあり方にも通じるものでした。子どもたちが「夢中になり、情熱を注げるものを大切にし、能動的な創造者になろうとする」ことを後押ししてあげる教育現場であるべきだと、二人のメッセージに勇気をもらいました。
Comments